『ヴァガボンズ・スタンダート02 森村泰昌』著者プロフィール
森村泰昌 (もりむら やすまさ)
現代芸術家、美術家。
ゴッホやダ・ヴィンチ、レンブラントなどの西洋絵画を自ら演じる作品「美術史シリーズ」をはじめ、マドンナやマリリン・モンロー、オードリー・ヘップバーンなどの女優に扮する「女優シリーズ」、毛沢東、三島由紀夫などの20世紀に活躍したアイコンに扮する「なにものかへのレクイエム」など、自身が幅広い対象に扮したセルフポートレイト作品を発表し続けることで知られている。
1951年、大阪の緑茶商の家に生まれる。小学生時代から河井達海の絵画塾に通い、多くの絵を描く。油絵制作に憧れ、高校で美術クラブに入部。顧問は佐々木節雄。高校 2年の頃から古典的な美術よりも現代的な美術に興味を持ちはじめる。
1971年、1年の浪人期間を経て京都市立芸術大学美術部工芸科に入学し、ヴィジュアルデザインを専攻する。大学卒業後は大手電気メーカーに勤めるが、三日で退職。
1976年には京都市立芸術大学美術学部専攻科デザイン専攻に再び入学。同年、大阪・鶴橋のJR環状線高架下にアトリエを開く。また、いくつかの高校で非常勤講師を勤めるようになる。1980年、京都市立芸術大学美術学部構想設計・映像設計(通称・映像教室)の非常勤講師となり、アーネスト・サトウ教授のアシスタントとして働く。
1983年には京都のギャラリー・マロニエにて、シルクスクリーンによる抽象的作風の版画による初の個展を開く。1985年からは京都芸術短期大学で非常勤講師を勤め、同年、自らがゴッホの自画像に扮するセルフポートレイト作品『肖像(ゴッホ)』を発表。『美術手帖』に展評が掲載される。また、自身にとって大型カラー写真によるセルフポートレイト作品のスタートになる。以後、現在までセルフポートレイトをテーマに作品を作り続けることとなる。
1988年、ヴェネティア・ビエンナーレ・アペルト’88に出品し国際的な注目を集める。そして1989年には「アゲインスト・ネイチャー」展(サンフランシスコ近代美術館で開催後アメリカ各地を巡回)や「ユーロパリア・ジャパン’89」(ゲント市立現代美術館・ベルギー)、1990年には「カルチャー・アンド・コメンタリー」(ハーシュホーン美術館・ワシントンD.C.)など、多数の国際展に参加。1989年、大阪のモーリギャラリーでの個展にて、初めてコンピューター合成の作品(レンブラントの作品をもとにした『九つの顔』、セザンヌの作品をもとにした『批評とその愛人』)を発表する。
1991年、ニューヨークでの初個展をルーリング・オーガスティンにて開催。以後、海外における多くの展覧会に出品するようになる。
1994年より「女優シリーズ」を月刊誌『パンジャ』に1年間、毎月掲載。同年駒場の東京大学900番講堂にてマリリン・モンローに扮するパフォーマンス活動を行い、以降パフォーマンスや映像作品にも多く着手するようになる。また同年に8台のプロジェクターによる初めてのスライドショー作品(制作・市川靖)、2006年にはシリーズ「なにものかへのレクイエム」を発表する。
主な個展は、1998年「空装美術館/絵画になった私」(東京都現代美術館)、2000年「Historia del Arte」(テレフォニカ財団/マドリード)、2001年「私の中のフリーダ/森村泰昌のセルフポートレート」(原美術館)、2002年、2007年「森村泰昌—美の教室、静聴せよ」(熊本市現代美術館、横浜美術館)、2007年「Requiem for the XX Century --Twilight of the Turbulent Gods--」(ベヴィラクア・ラ・マサ財団 サンマルコ・ギャラリー/ヴェニス)、2010年「なにものかへのレクイエム/戦場の頂上の芸術」(東京都写真美術館ほか)、2013年「Theater of the Self」(ウォーホル美術館/ピッツバーグ)など。
美術活動のほかに、ファッションデザイナー三宅一生とのコラボレーションや、演劇『パンドラの鐘』(1999年 作・野田秀樹、演出・蜷川幸雄)、映画『フィラメント』(2002年 辻仁成監督)への出演など、活動領域は幅広い。
文筆家としても活躍し、作品集以外にもエッセイや評論を多く刊行している。主な著書に、『美術の解剖学講義』(2001年 筑摩学芸文庫)、『芸術家Mのできるまで』(1998年 筑摩書房)、『「美しい」ってなんだろう?美術のすすめ』(2007年 理論社/のちにイーストプレスより復刊)、『対談集 なにものかへのレクイエム~20世紀を思考する〜』(2011年 岩波書店)、『知識ゼロからのフェルメール鑑賞術』(2013年 幻冬舎)。作品集に『Daughter of Art History』(2003年 アパチャー/米)、『卓上のバルコネグロ』(2005年 青幻舍)、『Yasumasa Morimura』(2008年 スキラ/仏)、『森村泰昌「全女優」』(2010年 二玄社)、『まねぶ美術史』(2010年 赤々舎)などがある。
2002年東川賞、2003年織部賞、2006年京都府文化賞功労賞、2007年度芸術選奨文部科学大臣賞、2011年第52回毎日芸術賞、紫綬褒章を受章。
2014年8月から始まる「ヨコハマトリエンナーレ2014」ではアーティスティック・ディレクターを勤める。